近年、円安ドル高が進む中、日本からアメリカ進出を検討する企業が増えています。特にテック産業や物流の中心地であるカリフォルニア州での法人設立は、ビジネス拡大を目指す経営者にとって大きなチャンスです。中でも人気の法人形態が「LLC(Limited Liability Company)」です。本記事では、LLCのメリット・デメリットを他の形態(S-CorporationやC-Corporation)と比較しながら紹介します。
LLCは、法人としての**責任の限定(Limited Liability)**と、個人事業のような税制のシンプルさを兼ね備えた法人形態です。会社としての登記は行いますが、法人所得はオーナーの個人所得に通される「パススルー課税」が基本。これにより、二重課税を回避できます。
また、S-corporationのような株主数の制限もなく、外国人による設立も可能です。これが、海外から進出する日本人経営者にとって大きな魅力となっています。
設立・維持が比較的簡単
C-corporationに比べて手続きや管理が簡単で、年次の報告義務や書類作成が少ないです。
税務面の柔軟性
パススルー課税により、法人税と個人税の二重課税を回避できます。また、必要に応じて法人課税(C-corp扱い)を選択することも可能です。
外国人による設立が可能
S-corporationでは外国人株主が制限されますが、LLCではその制約がありません。非居住者でも設立できます。
ビジネスの信頼性
個人事業よりも法人格を持つLLCの方が、銀行口座の開設や商取引での信頼性が高まります。
州によって異なるルールとコスト
たとえばカリフォルニア州では、年間$800のフランチャイズ税がLLCに課せられます。州によって手続きや税負担が異なるため、事前の調査が重要です。
パススルー課税の課題
所得が高額になると、個人の税率の方が法人税率より高くなる場合があります。この場合、C-corpを選択した方が税務上有利になる可能性もあります。
投資家からの資金調達に不利な場合も
ベンチャーキャピタルなどの投資家は、株式発行や明確な資本構成があるC-corporationを好む傾向があります。
項目 | LLC | S-Corp | C-Corp |
---|---|---|---|
設立の簡便さ | ◎ | ○ | △ |
税制 | パススルー課税(基本) | パススルー課税 | 二重課税 |
外国人の設立可否 | ○ | × | ○ |
投資家受け入れ | △ | △ | ◎ |
アメリカでのビジネス展開を考える際、LLCは設立のハードルが低く、税務面でも柔軟性があるため、特に初めて法人を設立する日本人経営者にはおすすめです。
将来的に投資家を迎えたり、事業拡大を狙う際にはS-CorporationやC-Corporationへの変更も可能ですので、まずはLLCでスタートし、段階的に法人形態を最適化するという考え方が現実的です。